島本微生物工業株式会社島本バイム農場で土の勉強

農業研修を受けているエースクールの農場で利用している「土こうじ」を作っている、滋賀県甲賀市にある島本微生物工業株式会社の島本バイム農場で、「土こうじ」や微生物を利用した土作りについて学んで来ました。

島本微生物工業株式とはどんな会社?

もともと「こうじ」や唾液の酵素を研究していた創始者である島本覚也さんが戦後資材が無い時代に、濡れて利用方法の無い破棄されていた木材屑を「同じ食物繊維なので肥料に使えないだろうか?」と着目し酵素を利用して一度発酵させて見たところ堆肥させる事が確認でき、畑にいれてみるとお化けのように立派な水菜ができた事から「微生物を応用することで木屑から藁・籾殻よりも土壌改良材が作れることを発案」、その後微生物の働きと酵素の機能について研究を重ね微生物農法を生み出しました。
現在三代目が経営する「微生物農法を学んだり、土作り資材の調達先」として最適な会社です。

木材屑を利用した堆肥づくり

木材屑を利用した堆肥づくりの説明

研修ではまず最初に木材屑を使用した堆肥づくりについて説明して頂きました。
現在この後ろにある堆肥は昨年の10月22日に仕込みを行った堆肥です。

堆肥の材料

比率
プレナ屑3t
乾燥鶏糞900kg30%
米糖90kg3%
バイムフード6kg0.2%
切り返し日付品温気温
第1回目10/2960℃14℃
第2回目11/1362℃20℃
第3回目12/358℃7℃
第4回目1/350℃5℃
第5回目2/330℃

木材には抗菌、殺菌作用があります。
木材の臭いを嗅ぐと木の良い香りがしますが、この臭いのあるうちは殺菌・抗菌作用が高く土壌改良に使用するには逆効果になってしまいます。
そのため、この木の匂いが完全に抜けて殺菌・抗菌などの毒性を抜いてしまう必要があります。

木材は元々揮発する物質なので熱を加えると無毒化する事が可能です。
土壌改良に問題の無い状態まで無毒化するには55℃以上の温度を3ヶ月しかりとかけてやれば毒性が除去できるそうです。
針葉樹は落葉樹より殺菌抗菌性が強いため針葉樹に比べ堆肥になるまでの期間も倍近くかかるため、材料となる木屑は針葉樹より落葉樹の方が向いているそうです。

仕込みから1週間立つと微生物の活動でしっかり発酵させることにより60℃ぐらいまで一気に温度が上がりいます。
この状態でほったらかしにすると、中の空気をつかって活動している微生物が内部で酸欠状態になってしまい、放置を続けると熱がある段階で一気に下がってしまいます。
そうならないように定期的に切り返しをおこない空気を取り込む必要があります。
温度が下がってくるタイミングが切り返しのタイミングになります。

木屑の水分量

木屑の水分量は60〜70%

木屑堆肥を作る際の水分量は60〜70%に調整します。
60〜70%の目安は軽く握って団子状の固まりになる程度の水分量になります。

完成状態の堆肥

この状態ぐらいになると殆ど臭いはしなくなり、握ってみても当初の木屑のようなとげとげしい感触は無くなっています。
この状態に仕上がった堆肥は土壌改良において土に混ぜ込んでもまったく害の無い堆肥として利用出来ます。

一般的には堆肥は一反あたり1t〜2tの散布量で十分と言われていますが、島本バイム農場では土の状態を良くして野菜をしっかりと育てやすい環境を整えるために5t〜10tのこの堆肥を畑に入れています。
半年ぐらいしっかりと発酵させて腐植化させた堆肥は土に馴染みやすく土壌改良に最適です。

水分調整においては60〜70%に保つ必要があるので、堆肥作りは野外で行います。
雨に当てることで十分水分を与える事ができます。余分な水分は自然に抜けていきますので雨ざらしの状態で3ヶ月間ほどおいた後に、追熟させる期間は放線菌・乳酸菌を培養するために水分量を減らす必要がありますので屋根のあるところにおき、雨が当たらない状態で追熟させて水分量を減らします。

この堆肥は販売もされているそうで、袋売りもしているそうですが、軽トラやトラックで買いに来るのが安上がりでおすすめとのことです。軽トラ1杯で5〜6千円程度で購入出来るそうです。

島本バイム農場の畑

続いて島本バイム農場の畑を見学させていただきました。
一見すると普通の畑です。

開墾して50年程になりますが毎年5t〜10tの堆肥を入れ続けた畑になります。

日本でもこれほど堆肥を入れているところは珍しいと思います。

畑に入ってすぐの所に地層の状態が確認しやすいように穴が掘ってありました。
ここの土壌はこの穴を見てわかるように粘土質です。
隣に信楽焼の信楽がありますので粘土の多い土が多い土壌です。

1㎡に5kg〜10kgの堆肥を入れたこの畑は中に入って見ると雪原のように足が沈む程のふっかふかの柔らかい土壌でした。

表面こそ普通の畑の土ですが上を歩いて見るとびっくりするほど軟らかい土です。

土にこの堆肥を入れ始めて3年目程度で大きく土は変化するそうです。
1年目でも効果は出るのですが3年目ぐらいで本当に良い土になるようです。

土こうじ

土こうじ

続いて土こうじ作りを見学させていただきました。

配合分量
山土250kg
米糖3.75kg
デンプン250g
バイムフード250g

原料になる山土ですが、このあたりは昔琵琶湖の底であった時沈殿した土壌の粘土層が固まってできた項岩(けつがん)でできていて、これを粉砕した土をつかっています。

この土に米糠3%程度と餌にデンプンとバイムフードを入れて布団を掛けて発酵させています。
水分量はぐっと握るとダマになりすぐにパラパラと崩れる程度の25%程。
仕込み中の土こうじの温度をはかると57℃まで温度が上がっていました。

土の中には色々な微生物がいて、一部の微生物が連作障害などの悪さを引き起こします。
それらの一部の微生物のために薬剤をつかって無菌状態にして対策をしてしますと良い微生物まで殺してしまう事になり、その死骸が有機物として残り、そこにまた悪さをする微生物が入ってくるともっと悪い状態になってしまうこともありえます。

そう言った農業の悪循環が現実に発生している対策として悪さをする微生物だけを押さえ込み良い微生物を増やす為に薬を使わず微生物の力をつかって改善するためにこの土こうじが効果を発揮します。
.この土こうじには放線菌が多く含まれているので昔の縁の下のような臭いがします。

1日1回切り返しをして3日間〜4日間程度で完成します。
1反の畑に500kg〜1t程度を目安に入れる事で連作障害の防止などに効果を発揮します。

高級粒状肥料 真農

土こうじの横では高級粒状肥料の真農を作っていました。

真農の材料は土こうじと同じ山土250kgに対し、菜種油粕150kgと魚粕50kg、骨粉50kgの合計250kgの同量に餌となるデンプンとバイムフードを入れます。

水分量はぐっと握るとダマになりすぐにパラパラと崩れる程度の30%程。
有機物のタンパク質は上手に発酵させるとアミノ酸に変換されます。
発酵技術を使うことで有機物をうまみ成分であるアミノ酸を分泌させています。
こちらも土こうじと同じく3〜4日で完成します。
この肥料を使うことで味を良くすることができます。

有機物の材料として菜種油粕、魚粕、骨粉が入っているのですが、特に果樹などで糖度を上げたいときには魚粕、骨粉などのゼラチン質を持つ有機物を入れると美味しくなります。
肥料にこだわる事で味を高める事ができます。
菜種油粕は植物性として長く効かせながら漁粕、骨粉で味を高める配合になっています。

有機肥料を畑に入れると、発酵際には2酸化炭素などのガスが畑の中に出てしまいます。
ガスが出る際に根にダメージを与えてしまいます。
そのガスによる根へのダメージを無くす為に一般的に有機肥料を土にまいてから植え付けまで2週間ほど時間を空けます。
しかしこの高級粒状肥料の真農は既に発酵処理を行って下処理されていますので畑にいれた時にガスが発生しません。
畑に入れたその日に植えつけできるメリットがあります。

この配合は真農特号の配合で、カリ分の補給で一部化学肥料で硫酸カリを7%入れています。
真農1号は6-7-0でカリ分を抜いて100%有機になっています。
真農2号は2-17-0でリン酸を上手に効かせる果菜類向けの肥料になっています。

配合分量
山土250kg
菜種油粕150kg
魚粕50kg
骨粉50kg
米糠15kg
デンプン又はトウゲン1号1kg
バイムフード1kg

トマトハウス

葉の状態を見るととてもきれいな色をしています。
化学肥料をつかって栽培するともっと黒緑に近い色になりますが、健康状態の良い葉はこの様な若草色になります。

植物は肥料(窒素分)と光合成によってできた糖をつかって自分の体を構成しています。

化学肥料は窒素が勝ちやすく、植物の健康状態は光合成によってできた糖がたくさんあった方が健康状態として良く、人間で言うところの免疫力が高い状態って言うのは光合成によってできた糖がいかに体に中に含まれているかによって病気が来たときの免疫が強いかどうかがポイントになります。

肥料は必要最低限与えてしかりと光合成できるような体制を作ってあげて頭でっかちの状態にしてあげる。
肥料を与えすぎると逆転してしまって葉が黒々して固く折れやすくなります。

糖がしっかり入ってる場合は柔らかく柔軟性があり、余った糖は美味しさの元にもなりますし、成長点に行きどんどん成長することと根っこも新しい根っこをどんどん育てまた根っこが養分をすって成長の体制ができ免疫力が高まり葉の艶が良くなり、カビとかが生えても寄せ付けないワックス層ができます。

これらも糖があるかないかでその差が生まれます。
このハウスのトマトはなんと10ヶ月程で10m以上に伸びています。

写真で見てわかるようにぐるっと回すように横に巻き付けて伸ばしているのが分かります。

このハウス内の土もふっかふかの柔らかさの土なので羽毛のダウンジャケットと同様に地中温度が温かく冬場にも地温が上がりやすいメリットがあります。

糖を葉から吸収させる技術

ここのトマトは黒砂糖を酵母菌で発酵させたものを葉に直接噴霧する事で葉から糖を吸収させる事で冬場の光合成しにくい状態でも糖を補っています。

普通の砂糖だと分子量が大きく葉から吸収できないため黒砂糖を発酵させて分解し、分子量を小さくしたものをつくり葉の表面から浸透性の高い状態で直接吸収させる事ができています。

夏場の植物を冬に作るのは難しさがあり、健康維持の土台作りとして

  • 根っこが伸びやすい環境(土づくり)
  • ストレスを与えない肥料の与え方(発酵肥料)
  • 葉面散布で糖の補給

これの対策を行うことで美味しいトマトや苺などを収穫することができます。

ハウス内でビニールシートを貼って熱で土壌消毒

連作障害などの根に悪さをする微生物はだいたい熱に弱い傾向があるので、土にホワイトソイルクリーン(太陽熱土壌処理用発光剤)を混ぜ込み上にビニールシートを張って温度を上げることで病原菌を除去する土壌消毒を行っています。

この処理を2週間〜3週間した後に作付けします。

できれば5月〜10月までの間に行うと温度が上がりやすく効果が高く、作土層で30cmぐらいまでの根が一番活動する深さの悪さをする微生物を除去したいので土に土こうじやホワイトソイルクリーンを混ぜ込むことで太陽光で届く範囲の10cm程度を越えて微生物の活動熱で作土層30cmぐらいまでを40℃以上に保ち排除する事ができます。

見学を終えて

見学を終えて色々な土作りの技を教えて頂きすっかり島本微生物工業株式会社のファンになりました。

是非本格的に農業事業にも手を出し始めたら島本微生物工業株式会社にお世話になり一から土作りをしっかり行ってふっかふかの土壌を作って美味しい作物を作ってみたいと思います。